前回のコラムでは、応急処置の基本であるRICE処置について書かせていただきましたが、今回はRICE処置のなかでも、特に重要なIce=冷却(アイシング)について、もう少し詳しく述べさせていただきます。
怪我をすると、多かれ少なかれ細胞がダメージを負います。細胞にダメージが加わると、細胞膜が破れて細胞液が漏れだしたり、毛細血管が切れて内出血を起こしてしまいます。
内出血で水圧が高くなることによって、正常な細胞の毛細血管の位置が押し上げられたり、毛細血管が切れて栄養や酸素が運ばれなくなると直接ダメージを受けていない正常な細胞も死んでしまいます。
つまり怪我をした後に、なにも処置をせずに放っておいた場合、直接怪我をしていない部分の細胞も死んでしまい、どんどん腫れや痛みが酷くなって、治る時間も長くなってしまうのです。
アイシングを行うと、細胞の代謝レベルが落ちて、それだけ必要な酸素や栄養の必要量が減るので「患部を冷凍保存する」ことになり、「怪我が酷くならない→怪我が早く治る」ことにつながります。
アイシングの時間についてですが、患部を冷やす時間は15~20分を目安にしてください。患部を冷やし続けると最初は少し冷たくて痛く感じたあと、一瞬暖かく感じた後、ピリピリとしてきます。それを過ぎると感覚がなくなってくるのですが、何も感じなくなるまで冷やすのがアイシングの基本です。その後しばらく冷やすのをやめてからまたアイシングを繰り返します。理想はアイシングとインターバルを2日間(24~48時間)ほど繰り返すとよいでしょう。
アイシングの方法についてですが、氷をビニール袋に詰めて空気を抜いた状態で患部に当てましょう。ただし、氷の表面に霜がついている場合は氷の温度が低すぎて凍傷になる恐れがありますので、袋に水を少し入れるとよいでしょう。
袋に氷を詰める方法以外では、氷を直接当てる(氷の表面が濡れている状態)、氷嚢やコールドパック、バケツに氷水を入れてアイシングする方法があります。
また、湿布薬やコールドスプレーは氷を使ったアイシングの代わりにはなりません。「冷却感」と「冷却効果」は全く違います。湿布薬には血行を促進する薬が塗られている事が多く、アイシングの目的と正反対の効果をもたらす可能性があります。ただし湿布薬には消炎鎮痛剤という成分が含まれていますので、患部の腫れが引いたあと(受傷後2~3日後)でも痛みが残っている場合などに使用すると良いでしょう。
コールドスプレーは冷却が深層まで届きませんので、スポーツ中に受傷し、すぐにプレーに戻らなければならない時の一時的に痛みを軽減させる場合に使用しましょう。
怪我以外にも、熱中症、鼻血、虫さされなどにもアイシングは効果的です。
怪我をしたらすぐに「RICE処置」、特にI=Ice(冷却)を心がけましょう。