人に物事を「教える」というのは「何かを伝える」と言い換えることができます。「教える(伝える)」ということは「指導者」&「生徒」だけのことではなく、「親」&「子ども」、「上司」&「部下」、「友達同士」、「夫婦同士」の関係においても日常にありふれています。
私自身も指導者としてすべて完璧に出来ているわけではありませんが、指導の際に気を付けている事や、「このような指導をしたい」と日頃より思案していることがありますので、このコラムを読んでいただいている方それぞれの立場に当てはめながら読んでいただけると幸いです。
【相手をよく見る】
まず、伝える相手が「何を持っているか」そして「何を持っていないか」を分かっていることが前提になります。相手が「出来る事」と「出来ない事」をしっかりと把握しておかなければ、受け取る側にうまく伝わらなかったり、ポイントがずれたりしてしまいます。
よくない行動の結果を直接伝えるだけではうまくいかないこともあります。なぜなら、「うまく出来ない」理由が、相手の「性格」や「癖」が原因の場合もありますので、広い視野を持って相手の本質を見ることが大切です。
たとえ「なぜ出来ないか」が分からなくとも「分かろうとする」ことを放棄してしまえば、それからの発展はありませんので、まずは相手をよく見て「知ろう・解ろう」と努力する必要があります。
【全体と細部をよく見る】
上述した「相手をよく見る」の延長になりますが、例えばスポーツ指導で言うと、習得してほしい技術(結果)があるとします。全体的に見るとその技術が出来ているか出来ていないかはすぐに分かりますが、出来ていない動きでも全体を細かく分解してパーツごとに見てみると、良い部分と悪い部分があることに気づきます。その悪い部分を指摘して良くなることもありますが、そこばかりに焦点を当てすぎて、良い部分まで崩れてしまう場合もあります。また、別の視点からのアプローチや良いところを伸ばすことで、自然と悪いところも修正されることもあります。これは人や物事、状況によっていつも同じではないので難しいことですが、相手にマッチする伝え方を試行錯誤して選ぶことが大切です。
【過程と結果をよく見る】
何か新しい事を覚えたり一つの事を修正したりするときは、「一度出来た」と「身に付いた」を分けて考える必要があります。習得や修正の過程では、うまくいったりいかなかったりを繰り返すものです。そのため、一度出来たからといって次の課題をどんどん与えられたりすると、出来そうになっていたことも逆戻りしてしまいます。
また、身についていなくとも「出来た」という瞬間は、見逃さないようにして褒めてあげましょう。「今、上手だったよ!」とか「うまくいったね!」といように、タイミング良く褒めることでその行動が強化され身につきやすくなります。
出来るようになっていく「過程」と、完全に身についたという「結果」をしっかりと見るようにして、伝えるタイミングを計ってあげてください。