ARPS会員の保護者の方とお話していると、「いつからスポーツさせればいいですか?」という質問をよく受けます。
幼い頃から1つのスポーツを続けていると、遅くに始めた子供よりもスタートが早い分、その差が判りやすく現れます。そのため、「幼い時期から1つのスポーツに絞らなければ、、、」と焦ってしまう保護者の方もおられるのではないでしょうか。
スポーツを練習する目的の大部分は『上達する』ことですが、多くのスポーツでは『正解』とされている動き(フォームやリズム)があります。そして、その『正解の動き』の習得を目標として繰り返し練習をすることが上達につながります。
例えば、野球だと『脇を閉めてバットを振る』とか、『体を開かないように踏み出して投げる』という動作を正しい動きだとします。しかしテニスにおいては道具でボールを打つという点では野球と同じですが『体を開いてから脇をあまり閉めず腕を伸ばして打つ』というように野球とは全く逆の動きをします。また投球においても、ハンドボールでは、ジャンプして投げたり、投げる側の足を出して投げることもあり、野球ではあまり行わないような動きをします。つまり、1つのスポーツでの正解は他のスポーツの正解に当てはまるとは限らないのです。
同じ『打つ』『投げる』という動きでも、スポーツによって様々なバリエーションや、身体操作があるにも関わらず、幼い頃から特定のスポーツだけを行い、一つの『正解』だけを目標として繰り返し練習した場合、身体操作の引き出しが増えず、体の動かし方がワンパターンになってしまいます。すると、成長していく過程で上達が頭打ちになったり、やってきたスポーツ以外は不得意だということになりかねません。
このように、スポーツを転向する際にだけでなく、同じスポーツを続ける場合であっても、一度身につけた技術を、状況によって修正したり、すぐに変更できる能力が高ければ高いほど、新しい技術習得の壁が低くなり上達は早くなります。したがって、身体を思ったように正確にコントロールできるこの『身体操作能力』を身につけることが、スポーツを行う為には非常に大切なことなのです。
つまり、早い時期からスポーツをすることがダメなのではなく、幼い頃から1つのスポーツだけをすることで、かえって身体操作のバリエーションを制限してしまうということが良くないのです。
子ども自身が『やりたい』という気持ちを持って『楽しく』続けられるのであれば、スポーツを始める時期はそれほど気にしなくても良いのではないかと我々は思っています。