今回は遊ぶことの大切さをスポーツの習い事を引き合いに出して書いてみたいと思います。
少年スポーツクラブでスポーツを習っている場合、野球で言えばバッティングやピッチングというように、特定スポーツの技術(以下スポーツスキルという)の習得が目的です。スポーツスキルの習得は「間違った動きを修正し、無駄な動きをそぎ落とす」ことにあります。指導者も『間違った動き』を訂正し、『正しい動き』を子どもに教えようとします。もちろんスポーツスキルを向上させたい場合は『正しい動き』を繰り返し練習することが必要なのは言うまでもありません。
それに対し、子どもたち同士が外で遊ぶ場合、ボール投げや、鬼ごっこ、木登りなど、遊びの種類に制限はありません。そして子ども同士が遊ぶ際に『正しい動き』とか『間違った動き』なんて意識することはほとんどありません。あったとしても「〇〇君は上手にボールを投げられるから僕もあんな風に投げてみたい」程度です。『遊び』は、ただ楽しいから遊ぶという純粋な思いです。誰に制限されることもなく好きなように体を動かし、自然に自ら試行錯誤することで『運動能力の基礎(以下運動スキルという)』を築いていくのです。
少年スポーツクラブなどでは、スポーツの特性上『動きの無駄を省く』という指導のやり方をしないわけにはいきません。習い事は一週間のうち、限られた時間のなかでしか行わないので、『量』もあまり確保できず、逆に『量』を確保しようとすると、特定の動きばかりを繰り返すことで、同じ部位を酷使してスポーツ障害を引き起こす危険性も高くなります。
運動スキルを身に着けるためには、『動きの多様性』と、『量』が必要です。また時間もかかるので、一朝一夕にはいかないものです。こういった理由で少年スポーツクラブでは運動スキルを向上させることは難しいといえるでしょう。
建築で例えると、遊びは『基礎、土台』、スポーツは『建物』といえるでしょう。広く、基礎のしっかりとした土台があれば、高いビルも作ることができますが、基礎がいい加減で土台が不安定だと、高さのある、大きな建物は建てられません。
したがって、プロを目指すような場合や、小さい頃からやりたいスポーツが決まっている場合、もちろんそのスポーツをすることは良いと思うのですが、『土台』は幼い頃にしか作られない事、また『土台』と『建物』の比重が逆転してしまっては、大きなビルにはならないという事をしっかり理解したうえで、バランスを考えてスポーツを習うのが良いと私は考えています。
昔の日本では遊びの中で勝手に育つものだった運動スキルですが、悲しいことに今ではその環境は少なくなってきているのは事実です。このような時代の変化から、ARPSのような運動教室は今後どんどん増えていくでしょう。